「ロレックス」の名を聞けば、多くの人がオイスターの頑丈なケースと、スポーティなスタイルを思い浮かべるだろう。しかし、チェリーニ シリーズ、特に「プリンス 5441/9」は、それらとは一線を画す。それは、ロレックスがその歴史の中で培った機械式ムーブメント製造技術の真髄を、芸術的なまでに装飾し、最も純粋な形で披露した、まさに「コレクターズアイテム」なのである。
この時計の最大の特徴は、その「レクトangular(長方形)」のケースと、「見えるムーブメント」にある。1920年代のアールデコ調を思わせるこの独創的なデザインは、ロレックスとしては極めて異色であり、ブランドの知られざる一面を覗かせる。
しかし、この時計の真骨頂は、ケースバックを開けた時に現れる。そこには、ロレックス自慢の手巻き式ムーブメント「キャリバー7040」が、驚くべき美しさで収められている。このムーブメントは、コート・ド・ジュネーヴやパール仕上げといった最高峰の手工芸的仕上げが施され、時計の「心臓部」そのものが主役なのである。これは、ロレックスが「外見の堅牢さ」だけでなく、「内側の美」に対しても並々ならぬこだわりを持つことを証明している。
文字盤は、清楚なローマ数字とバーントシェル風の模様が、クラシカルな雰囲気を漂わせる。その佇まいは、正装時計としての品格を保ちながら、内に秘めた機械的な熱情を静かに予感させる。
ロレックス チェリーニ プリンスは、単なる時計を超えた「ロレックスの美学宣言」である。それは、ブランドの多様性を理解し、機械の美しさを愛でる者だけが手にできる、もう一つのロレックスなのだ。