1950年代、ジュネーブに新たに設立された欧州原子核研究機構(CERN)では、巨大な電磁場の中で正確に時を刻む時計が求められていた。当時、通常の時計はわずか50〜100ガウスの磁場で停止してしまったからである 。ロレックスコピーはこの課題に応えるべく、1956年に「ミルガウス」を誕生させた。その名は、千を意味する「ミル(Mil)」と磁気の単位「ガウス(Gauss)」に由来し、1000ガウスの磁場に耐えることを使命としたのである 。
初代モデルRef.6541などの後を受けて1960年代初頭に登場したのが、Ref.1019である 。この第二代ミルガウスは、先代の特徴であった稲妻針や回転ベゼルを廃し、極めて純粋で機能的なツールウォッチへと生まれ変わった 。38mmのステンレススチールケースは当時としては大きく、その厚みと相まって、所有する者を驚かせる存在感を放つ 。鏡面仕上げの滑らかなベゼルが、無駄を削ぎ落としたデザインを一層引き立てている。
文字盤はシルバーまたはマットブラックが用意され、どちらも針とアプライドインデックスにはトリチウム夜光が施された 。そして、このモデルのトレードマークとも言えるのが、先端に赤い矢印を持つストレートな秒針である 。12時位置に記された赤い「Milgauss」の文字とともに、控えめな外観の中に唯一の鮮やかなアクセントを添えている。
この時計の真髄は、目に見えない内部にある。ケースバック内部に組み込まれた軟鉄製の「ファラデーケージ」が、ムーブメントを磁気の影響から完全に保護する 。搭載される自動巻きキャリバー1580は、この防磁ケースに守られ、1000ガウスもの強力な磁場の中でも驚異的な精度を維持した 。CERNは、この1019が防磁性能を備えていることを確認した最初の研究機関の一つである 。
1960年代から1988年または1990年までの長期にわたり生産されたRef.1019は 、決して商業的な大成功を収めたモデルではなかった。しかし、その希少性と極めてピュアなツールウォッチとしての魅力は、現代のコレクターの間で静かな熱狂を呼んでいる 。科学という最前線で生まれたこの一本は、時を超えて、機能美の真髄を私たちに伝え続けている。