2006年、バーゼルワールドの会場でロレックスは一つの宣言をした。GMTマスター誕生50周年を記念し、これまでの常識を覆す3つのジュエリーGMTモデルを発表したのである 。その中でもRef.116758SARUは、伝統と革新、機能と装飾という相反する要素を完璧に融合させた、異形の逸品として時計史にその名を刻んでいる。
40mmの18Kイエローゴールドケースは、ロレックスの貴金属加工技術の粋を集めた重厚な存在感を放つ 。しかし、この時計の真髄は、一目でそれと識別できるベゼルにある。青いサファイアと赤いルビーが交互にバゲットカットで埋め尽くされ、4方向のアワーマーカーにはダイヤモンドが配されている 。この独創的なコンビネーションが、1956年の初代GMTマスターに採用された赤と青のベークライトベゼルへの最高のオマージュであることを、知る人ぞ知る 。
さらに、ラグとクラウンガードにもパヴェセッティングのダイヤモンドが敷き詰められ、ケース全体が一つの宝石箱のような輝きを放つ 。文字盤はブラックまたはシャンパンカラーが用意され 、いずれも夜光処理を施したアプライドインデックスと、GMT針が確かな視認性を確保する 。この機能性と装飾性の絶妙なバランスこそ、ロレックスが「プロフェッショナルのための道具」として培ってきたDNAを感じさせる。
心臓部に搭載されるのは、自社製キャリバー3186である 。31石、28,800振動/時、約48〜50時間のパワーリザーブを誇り、独立して調整可能な24時間針により、二つの時間帯を正確に刻む 。クロノメーター精度と100mの防水性能も、日常使いにおける実用的な信頼性を裏付けている 。
生産数は極めて限定的であり、地域のブティックや特別な顧客のみに割り当てられたと言われる 。2006年から2012年頃まで製造されたこのモデルは、今日ではオークションやプレミアム中古市場で高値で取引される希少な存在である 。
116758SARUは、単なる時計ではない。それは、GMTマスター50年の歴史が結実した、黄金に輝く宝石箱であり、ロレックスの技術力と宝飾技巧が融合した、時を超えた物語そのものなのである。