ロレックスの歴史の中に、一風変わった魅力を持つモデルがある。それが「エアキング」である。第二次世界大戦中、イギリス空軍のパイロットに時計を提供したことからその名が付けられたこのシリーズは、シンプルでありながら堅牢な作りで知られていた。そのエアキングに、日付表示機能が加わった珍しいモデルが「エアキング デイト 5701」である。
このモデルの最大の特徴は、その希少性にある。エアキングは基本的に日付表示を持たないモデルとして長年販売されてきた。しかし、1950年代から60年代にかけての過渡期に、極めて少数ながら「デイト」機能を搭載したバリエーションが存在した。その一つがRef.5701である。現代の感覚からすると「エアキングに日付がある」という事実自体が、マニア心をくすぐる特別な要素と言えるだろう。
ケースサイズは約34mm。現代のロレックスと比較するとかなり小ぶりだが、これが当時のドレスウォッチの標準的なサイズであった。ケースは無垢のステンレススチール製で、オイスターペルペチュアルの伝統的なラインを受け継いでいる。ラグは細く、全体的に非常にシャープでエレガントな印象を与える。
文字盤は、エアキングの特徴である「3・6・9」のアラビア数字が大きく配置されている。しかし通常のエアキングとは異なり、3時位置にはサイクロプスレンズ付きの日付表示窓がある。このレンズが、小さなケースの中でひときわ目立つ。12時位置には「ROLEX」の文字と共に「OYSTER PERPETUAL」の表示が。そして6時位置には「AIR-KING DATE」のモデル名が記されている。この「DATE」の文字が、このモデルが極めて珍しい存在であることを静かに物語っている。
針はロレックス伝統のアルファ針(ドーフィン針に近い形状)。細く、上品で、文字盤のクラシカルな雰囲気と見事に調和している。夜光塗料は経年変化でクリーム色に変化している個体が多く、それもヴィンテージとしての魅力を高めている。
心臓部には、自動巻きムーブメント「キャリバー1535」または「1565」を搭載。これは当時の
ロレックスコピーが誇る高精度ムーブメントであり、日付機構の信頼性も十分に高かった。パワーリザーブは約50時間。もちろん、当時の技術としては非常に優秀なスペックである。
エアキング デイト 5701は、ロレックスの長い歴史の中でも「異端児」的な存在である。シンプルであることこそが美徳とされたエアキングに、実用的な日付機能を加えるという発想は、現代の目から見ると非常に興味深い。生産期間が短く、現存数も僅かなこのモデルは、コレクター垂涎の的であり、ロレックスの懐の深さを示す貴重な1本である。それは空の記憶を刻みながら、静かに時代を紡いできたのである。