時計の世界に「深海の王者」の称号があるとすれば、ロレックス シードゥエラー ディープシー Ref.116660は、その名にふさわしい存在である。2008年に誕生したこのモデルは、1960年の「トリエステ」によるマリアナ海溝への挑戦から受け継がれるロレックスの深海探検の伝統を、現代の技術で結晶させた一本だ。
このモデルの最大の特徴は、その驚異的な防水性能にある。直径44mmのオイスターケースは、3,900m(12,800フィート)という圧倒的な防水性を誇り、深海の過酷な水圧にも耐えうる堅牢な構造を持つ。ケース素材には、ロレックスが独自に開発した904Lスチールが採用され、耐食性と強度を両立している。このケースは、ロレックスの歴史の中で最も複雑な構造を持つものの一つであり、その製造には高度な技術と熟練の職人技が必要とされる。
最大の魅力は、その「Dブルー」ダイヤルにある。ディープブルーからブラックへとグラデーションが施されたこの文字盤は、深海の闇に差し込む一筋の光を表現している。このグラデーションは、ロレックスが開発した独自の技法によって実現されており、光の角度によって刻一刻と表情を変える。ダイヤル上には、大きな夜光インデックスと針が配され、暗闇の深海でも卓越した視認性を発揮する。
心臓部には、ロレックス自社製の自動巻きムーブメント「キャリバー3135」が搭載されている。COSC認定のクロノメーターとして、その精度は折り紙付きであり、約48時間のパワーリザーブを誇る。ケースバックには、ロレックスの深海探検の歴史を物語る刻印が施されている。
オイスターブレスレットには、グライドロック・クラスプが採用され、ダイビングスーツの上でも着用可能な実用性を備えている。116660は、単なる時計ではなく、深海への挑戦とロレックスの技術力が融合した、時を超えたプロフェッショナル・ツールなのである。