時計の世界に「飽和潜水の申し子」と呼ぶべきモデルがある。ロレックス シードゥエラー Ref.1665は、1967年にフランスの深海潜水専門企業COMEXとの共同開発によって誕生した、世界初の飽和潜水用腕時計である。
このモデルの最大の特徴は、その名を「赤シード(Double Red)」とさせる2行の赤い文字盤にある。「SEA-DWELLER」と「SUBMARINER 2000」——この2つの赤い刻印は、610メートルという当時常識外れの防水性能を誇るプロフェッショナル・ダイバーズウォッチの証である。1977年頃に白文字の「グレートホワイト」へと移行するまでの約10年間のみ製造されたこの赤文字ダイヤルは、コレクターの間で最も希少かつ垂涎の的となっている。
もう一つの革新的要素が、ケース側面に配されたヘリウムガスエスケープバルブである。飽和潜水後の減圧過程中、ケース内に蓄積したヘリウムガスを自動的に排出するこの機構は、ロレックスの特許技術として当時の深海探査に革命をもたらした。
心臓部には、クロノメーター認定の自動巻きキャリバー1570が搭載されている。26石の宝石軸受と毎時19,800振動の安定した鼓動が、極限環境下でも確かな精度を約束する。
ダイヤルは時代とともにMK0からMK4まで分類され、文字の大きさや王冠の形状、クロノメーター表記の配置など、細部が刻一刻と変化した。その中でも「レイルダイヤル」と呼ばれるクロノメーター表記の上下スペースが揃った希少仕様は、ヴィンテージ愛好家の間で特に高い評価を受けている。
1665は単なる時計ではない。それは、深海探査の歴史とロレックスの技術革新が融合した、時を超えて受け継がれるべき伝説の道具なのである。