時計の世界に「短命の名機」と呼ばれるモデルがある。ロレックス シードゥエラー Ref.116600は、2014年に6年ぶりに復活を果たしながら、わずか3年後の2017年に生産を終了した、極めて希少な一本である。
このモデルの最大の特徴は、伝統の40mmケースに、耐傷性に優れたセラクロムベゼルを初めて搭載した点にある。ベゼルの全ての分目盛りが刻まれたフルスケール仕様やマットな質感の文字盤が、プロ機材としての力強さを感じさせる。防水性能は1220m(4000フィート)に達し、プロフェッショナルな飽和潜水にも対応する。
心臓部には、信頼性の高い自動巻きムーブメントCal.3135を搭載する。約48時間のパワーリザーブを誇り、耐磁性ブルー・パラクロム・ヒゲゼンマイを採用することで、精度と耐久性を両立している。ブレスレットには、工具不要で微調整が可能なグライドロッククラスプを備え、装着感の向上にも配慮されている。
生産終了後、その短い製造期間から「レア」という印象が強まり、相場は大きく上昇した。2022年には200万円を超える水準に到達したが、近年はサブマリーナー116610LNと同等の価格帯にまで落ち着きを見せている。それでもなお、新旧のデザインが融合したこの一本は、ロレックスの歴史において特別な存在であり続けている。
116600は、単なる時計ではない。それは、6年の空白を経て復活した伝説が、わずか3年で幕を閉じた、時を超えた希少性そのものなのである。